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納屋に暮らす (久保田邸改装) 1997/3 完成 |
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祖父が建てた築58年目の2階建ての納屋を 居間及び寝室に改装しました。 私が子供の時から、米や藁や様々な物が置かれ ていました。 2階の窓から1階の屋根に出ることができて、 屋根の上で昼寝をしたり、屋根の上までのびた なつめや柿の実を取って食べたり、 かくれんぼで納屋の中に隠れたり、 断熱も何もない土壁の荒壁のみの貫が見えて いる状態の納屋が、兄夫妻のための新たな出発 地点として生まれ変わり、新しい暮らしが始ま りました。 |
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棟木には、上棟日と棟梁の名前がしっかりと墨で記されていました。 この思いを受け継ぎ設計、工事を行ないました。 |
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納屋に暮らす 主な仕上げ 床/栗縁甲板(厚)15 壁/既存荒壁の上ワラスサ入り京壁塗り 天井/既存野地板の上ワラスサ入り京壁塗り 所在/長野県麻績村 改装面積/24.78㎡ 工事費/160万円
ニューハウス1998年12月号 招かれたい家/ニューハウス出版 ナイスリフォーム27/日経ホーム出版社 |
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田んぼの土が伝えたかったこと (工事をふりかえって) 1997年3月 久保田 和人 田んぼの土? まさに田んぼの土らしい。 祖父が作った、この牛小屋兼物置きの壁は、近くの田んぼの土を、祖父が自ら塗ったらしい。別に左官職人ではない。ただの百姓である。 1940年(昭和15年)今から60年近くまえに、素人同然の祖父が塗った壁が、今ここにある。 ここに天井を作って壁紙を貼ればいい部屋になるぞ、親父がそう言って笑う。 その時、物置きの中はゴミに近いものであふれていた。 今、土壁が見直されはじめてていることなど、知るはずもない、現生の百姓が親父なのだ。 ここに、しっくいは塗れるんか? と兄貴が言った。 土壁に、興味をもっていた私は、ここが実家であることをいいことに、このままで住めないかな。 兄貴の顔が一瞬でこわばる。 こいつ何言いだすんだ。 うーん、ちょっとそれは・・・遠慮がちに断られる。このままの荒壁のイメ-ジで仕上げたかった私ではあったが、このまま案をあきらめワラスサ入り の見本を用意して、兄貴に納得してもらった。 おやじが不思議そうな顔で、今さら何で左官なんだ、と言い出しせっかくいい方向に向き始めた計画に水をさす。 反面、昔のことを聞くと嬉しそうに、昔は、何週間もワラと土がなじむように、足で踏んだもんだ。俺のコテだってあるんだ。 親父、塗れるんか?と聞くと 塗れるさ、昔は・・・ ここからは長くなるので省略します。 そんなことで、天井は梁と母屋を出して仕上げるよ、と言うと又不思議そうな顔をしながら ほー?とため息に近い返事を親父がした。 兄貴とはすぐに意見が一致したが、親父に説明し納得させることに時間を用した。 荒床より桁まで6尺(1M80CM)の4.5寸勾配の物置きは、田んぼの土に導かれるように、何とも言えない空間へと変わっていくことになる。 はみ出した土壁や、よごれた梁を兄貴夫婦(当時恋人)で、落としたり、ふいたりして仕上げた。 大工工事は私と兄貴の同級生のお兄さんに頼んだ。 問題は、左官だ、おじさんが左官職人なのだが、おじさんだけに私も気を使う。 あのさー おじさんちょっと見てもらいたいんだけどさ・・・ と言いながら、物置きを案内した。 そんなことしないで、ビニ-ルクロスでも貼った方がいい部屋になるよ。 左官職人のおじさんが言う。やっぱり、断られたのだ。 もう、何年もこんな面倒な壁は塗ってないらしい。しかも下地は田んぼの土なのだから、無理もない。 現在、こんな田舎でも左官仕事と言えば、申し訳ない程度に作られた和室の壁ぐらいなのだ。 もう、頼み込むしかない、何をどう言ったか忘れたが、最後は手をついて『お願いします。』 おじさんも渋々承諾してくれた。 しかし、いざ始まると実にすばらしい腕におどろかされた。 コテの数、バリエ-ションだけでも目をみはる。 聞けば京都で、修行してきているらしい。 ちょっとやらせて、天井の下塗りをやらせてもらった。見るとやるとは大違い、私が1㎡塗る間におじさんは、5〜6㎡は塗ってしまう。 そのうち親父がコテをもって現われる。 工事中は、本当におもしろい、新婚部屋ということでかもしれないが、入れ代わり、立ち代わり、家族がのぞきに来る。90歳のばあちゃんまで顔を だす、いや口をだす。 まあ、いろいろあったけど、照明器具を兄貴とふたりで付け直したり、床板を張り替えたり,工事期限の結婚式の日ギリギリに何とかできあがった。 結婚式の日は、親戚、関係者が入れ替わり立ち替わり見学、一同に、うけにうけた。 特に二十歳そこそこの娘(私のいとこ)が『ステキ・・・』と言ったのを聞いて、一番嬉しそうだったのは、だれあろう。左官職人 のおじさんだった。 実家物置き改装工事(久保田邸)より 平成9年(1997)3月吉日 完成 改装面積24.78㎡(10帖+3帖+階段室2帖) 掲載誌/ニュ-ハウス1998-12月号 ナイスリフォ-ム27新春号 招かれたい家(ニューハウス出版) |
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